科学者、エンジニアらが新しい現象の発見、新しい解釈、新しい方程式などについて執筆した記事は科学技術論文と呼ばれています。科学技術論文を参考にして日々、新たなモノやコト、すなわち製品、サービス、制度などが作られています。このことを考えると、新たなモノやコトを生み出すために皆が参考にしている科学技術論文はどれなのか、といったことに興味がわいてきます。加えて、「私も皆が注目している科学技術論文を参考にしたい」という思われる方も
多いのではないでしょうか。このような要望に応えるため、今注目されてる科学技術論文がわかるWebサイト(ENGINEERING BRAIN 科学技術論文アクセスランキング)を開設しました。
本Webサイトで「今注目されている」とは「今現在、価値が高い」ことを意味します。すなわち、過去から現在にわたって長く参考にされている、ロングセラーといった論文を紹介するのではなく、特に最近注目されている論文を紹介するのが本Webサイトの特徴です。今現在の価値を表す指標として、現在知識価値(PKV:Present Knowledge Value)という指標を独自に定義し、本指標に沿って価値の高いと評価されている論文を紹介しています。
現在、論文の価値は引用数やインパクトファクターで語られることが多いです。引用数とは、ある論文が他の論文からどれだけ引用されているかを示す数値です。他の論文から引用されることは、他の論文の著者から参考にされていることを意味し、したがって引用される論文の価値が高いとみなされるわけです。ただし、引用するのは論文の著者に限られるため、論文を執筆しない方々の参考になっているかは不明、という側面があります。つまり、研究者のみが参考にしており、実務を担当しているエンジニアは参考にしていない論文であっても、引用数は多いため、価値が高いと見なされます。
インパクトファクターは、ある雑誌に含まれる論文が、どれだけ他の論文から引用されているかに基づき決定される価値指標です。引用数は論文毎に付与される値ですが、インパクトファクターは雑誌毎に付与される値であるという点が前述の引用数とは異なります。ただし、インパクトファクターも引用数に基づいた指標であるため、論文の著者以外からどれだけ参考にされているかは不明です。
本Webサイトで採用した現在知識価値(PKV)は、論文の引用数ではなく、その論文のアクセス数に基づいて算出されます。したがって、論文を執筆する学者のみが価値が高いと判断した指標である引用数やインパクトファクターとは一線を画する指標です。研究者に限らない様々な職業の方々が興味を持ち、ある論文にアクセスした数に応じて、現在知識価値は変化します。したがって、より広範な意見を反映した論文の価値指標と考えることができます。
このような論文の価値指標の採用によって、論文の執筆者は、幅広い職種の方々に自分が執筆した論文が読まれているかどうかを知ることができます。特に工学系の論文は基礎的な理論ではなく、基礎理論を実世界で活用するために必要は応用技術を扱っている場合も多いため、基礎理論を扱った論文よりも引用数が少ない傾向にあります。一方で、工学系の論文は新たな製品やサービスを生み出すために、学者以外の職業の方々に参考にされている可能性が大いにあります。いずれにせよ、本Webサイトが真に有用な論文を紹介するサイトとして皆さんに広く活用され、かつ論文を執筆する側の方々の励みにもなって欲しいと切に願う次第です。